Egypt West Delta Archaeological Project

エジプト西デルタ考古学プロジェクト

プロジェクトの目的

本調査は、アレクサンドリア後背地域【図1】において、ヘレニズム時代の生活の知を探る研究です。当該地域には多くの湖が分布していますが、これらは今から8000年ほど前の海進が現在の海岸線まで引いたことによって形成されたもので、多くは海と繋がった潟湖として残されました。土中には高い塩分が残るため、この地域は通常の農業は難しい場として知られていますが【図2】、不思議なことにこの地域には多くのヘレニズム遺跡が分布しています【図3】。

図1

図1

図2

図2

図3

図3

それならば、そこで営まれた人々の暮らしぶりは、どのような特徴をもつのでしょうか?そこには、私たちが良く知っているファラオ時代の農民像とは異なる世界があり、生活の困難な場をも生きた空間として取り結んだ知恵と戦略があったのではないでしょうか?

図4

図4

本研究は、こうした疑問に答えるために、通常の遺跡の発掘という手順から始めるのではなく、地域の環境の変化を探ることを主軸にして、考古学・画像情報学・地理学の総合調査として進められてきましたが【図4】、近年では新たに最先端の測量技術で微地形を測り、遺跡情報をGISに組み立てていく研究班が加わりました。私たちの研究対象地域であるブハイラ県のイドゥク湖のほとりは、伝統的な低湿地です。従来のヨーロッパを中心とする古典考古学研究では、アレクサンドリア周辺の石灰岩尾根の地中海的な景観や海辺と緑地あるいは海辺と砂漠のつながりの研究に重点が置かれてきたために、低湿地での人々の暮らしぶりに焦点を当てた私たちのアプローチは、学史に新しい光を投げかけると思われます。

 


 

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